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「1Q84」村上春樹・テキストと英語の訳語・ページ 13

「1Q84」村上春樹・テキストと英語の訳語・ページ 13

One Straw Revolution

November 3, 20233m 6s

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Show Notes

原文13

しかし、彼女自身はまだそこにいったことがない。青豆が生まれる前から、父親は実家と絶縁していた。母方も同じだ。だから青豆は祖父に一度も会ったことがない。彼女はほとんど流行をしないが、それで、もたまにそういう議会があれば、ホテルに備え付けられた電話帳を開いて、青豆という姓を持った人がいないか調べることを習慣にしていた。しかし青豆という名前を持つ人物は、これまで彼女が訪れたどこの都市にも、どこの町にも、一人として見あたらなかった。そのたびに彼女は大海原に単身投げ出された孤独な漂流者のような気持ちになった。

名前を名乗るのがいつもおっくだった。自分の名前を口にするたびに、相手は不死きそうな目で、あるいは戸惑った目で彼女の顔を見た。青豆さん?そうです。青い豆と書いて、アオマメです。会社に勤めているときには名刺を持たなく手はならなかったので、そのぶん煩わしいことが多かった。名刺を渡すと相手はそれをしばし凝視した。丸出し抜けに不幸の手紙でも渡されたみたいに。電話口で名前を告げると、くすくす笑われることもあった。役所や病院の待合室で名前を呼ばれると、人々は頭を上げて彼女を見た。「青豆」なんていう名前のついた人間は一体どんな顔をしているんだろうと。

ときどき間違えて「枝豆さん」と呼ぶん人もいた。「空豆さん」と言われることもある。その度に「いいえ、枝豆(空豆)ではなく、青豆です。まあ似たような物ですが」と訂正した。すると相手は苦笑しながら謝る。「いや、それにしても珍しいお名前ですね」と言う。三十代間の人生でいったい何度、同じ台詞を聞かされただろう。どれだけこの名前のことで、みんなにつまらない冗談を言われただろう。こんな性に生まれていなかったら、私のお人生は今とは違う形(14)をとっていたかもしれない。

しかし、彼女自身はまだそこにいったことがない。青豆が生まれる前から、父親は実家と絶縁していた。母方も同じだ。だから青豆は祖父に一度も会ったことがない。 However, she herself had never been there. Since before Aomame was born, her father had been estranged from his family. The same was true on her mother's side. So Aomame had never met her grandfather even once.

彼女はほとんど流行をしないが、それで、もたまにそういう議会があれば、ホテルに備え付けられた電話帳を開いて、青豆という姓を持った人がいないか調べることを習慣にしていた。 She hardly ever traveled, but when she did, if such a situation arose, she made it a habit to open the telephone book provided in hotels to check if there was anyone with the surname Aomame.

しかし青豆という名前を持つ人物は、これまで彼女が訪れたどこの都市にも、どこの町にも、一人として見あたらなかった。そのたびに彼女は大海原に単身投げ出された孤独な漂流者のような気持ちになった。 However, she had never come across anyone with the name Aomame in any city or town she had visited so far. Each time, she felt like a lonely castaway thrown into the vast ocean.

名前を名乗るのがいつもおっくだった。自分の名前を口にするたびに、相手は不死きそうな目で、あるいは戸惑った目で彼女の顔を見た。 It was always awkward to introduce herself. Every time she mentioned her name, the other person would look at her face with a somewhat disbelieving or puzzled look.

青豆さん?そうです。青い豆と書いて、アオマメです。 "Aomame? Yes. It's written as blue bean, Aomame."

会社に勤めているときには名刺を持たなく手はならなかったので、そのぶん煩わしいことが多かった。 When she was working for a company, it was necessary to have business cards, which often caused inconvenience.

名刺を渡すと相手はそれをしばし凝視した。丸出し抜けに不幸の手紙でも渡されたみたいに。 When she handed out her business card, the recipient would stare at it for a moment, as if they had been handed a letter of misfortune.

電話口で名前を告げると、くすくす笑われることもあった。 Sometimes when she said her name over the phone, she would be laughed at quietly.

役所や病院の待合室で名前を呼ばれると、人々は頭を上げて彼女を見た。 When her name was called in the waiting rooms of public offices or hospitals, people would look up at her.

「青豆」なんていう名前のついた人間は一体どんな顔をしているんだろうと。 They probably wondered what kind of face a person with the name "Aomame" had.

ときどき間違えて「枝豆さん」と呼ぶ人もいた。「空豆さん」と言われることもある。 Sometimes people mistakenly called her "Edamame" or "Soramame".

その度に「いいえ、枝豆(空豆)ではなく、青豆です。まあ似たような物ですが」と訂正した。 Each time, she corrected them, "No, it's not Edamame (or Soramame), it's Aomame. Well, they are somewhat similar."

すると相手は苦笑しながら謝る。「いや、それにしても珍しいお名前ですね」と言う。 Then the other person would apologize with a wry smile, saying, "Well, it's a very unusual name indeed."

三十代間の人生でいったい何度、同じ台詞を聞かされただろう。どれだけこの名前のことで、みんなにつまらない冗談を言われただろう。 Throughout her thirties, how many times had she heard the same lines? How many dull jokes had she heard from everyone about this name?

こんな性に生まれていなかったら、私のお人生は今とは違う形(14)をとっていたかもしれない。 If I hadn't been born with this surname, life might have taken a different shape (14).

Vocabulary:

* 絶縁 (ぜつえん) - Disconnection, estrangement.

* 姓 (せい) - Surname.

* 孤独 (こどく) - Loneliness, solitude.

* 漂流者 (ひょうりゅうしゃ) - Castaway, drifter.

* 名乗る (なのる) - To introduce oneself.

* 戸惑った (とまどった) - Puzzled, bewildered.

* 名刺 (めいし) - Business card.

* 凝視 (ぎょうし) - Stare, gaze.

* 不幸 (ふこう) - Misfortune, unhappiness.

* 顔 (かお) - Face.

* 間違えて (まちがえて) - Mistakenly.

* 訂正 (ていせい) - Correction.

* 苦笑 (くしょう) - Wry smile, bitter smile.

* 珍しい (めずらしい) - Unusual, rare.



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