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Show Notes
第4
あの日から数日後、馬鹿な男子達に悪口を言ったり、弱虫な桐生くんを注意したり、荻原くんに宿なしハックの本を進めたりした後、このごろ毎日来ていた南さんのいる屋上で、私は空を見上げて、大変に満足な、まるで大きなハンバーグを食べきってしまったときのよりな満腹の息を吐きました。
私がそうしている理由、南さんにはばれているしょうに、南さんはずっと前と見たまま手並みのいい友達の背中を撫でています。
私は、この心の奥から行儀悪く溢れ出る気持ちをどう言葉にすればいいか精一杯考えてから、隣に座る南さんの方へと向きました。
「人生とは、ヤギさんみたいなものね」
「なんだよそりゃ」
「素敵な物語を読むと思うの。私、この本を食べて生きていけるかもって」
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「んなわけねえだろ」
「ええ、でも私、今お腹いっぱいよ。すっごく素敵なお話を読んだから」
私はこの興奮で体が爆発してしまわないか心配で、一度深呼吸し、それから息を吐きだすのと一緒にこっちを見てくれない南さんの名前を呼びました。
「南さん!凄いわ!こんなお話を書けるなんて!本当に凄い」
心から私は南さんへの尊敬を言葉にしました。
前に言って私の秘密、私もいつか物語を書きたいと思っている。でも本当はもう一つ秘密があったのです。実は、私は何度か物語を書いてみようとしたことがありました。でも、試しに書いてみると、全然上手くいかなくて、かっこいいトムや宿なしハックのような登場人物をこの世界に生きだすことなんて全然出来なくて、私は凄く落ち込みました。それはもう、おばあちゃんの焼いたマフィンが半分しか喉を通らなくらい。私は、このままやせ細ってしまうんじゃないかとすら思いました。
そんな経験のある私には、びっくりしてしまうような展開や、かっこい登場人物達を生み出す南さんは、テレビに出てくるどんな違い人よりも凄い人に思えたのです。
私はどうやったらこんな物語が書けるのか教えてほしくて仕方がありませんでした。
でも、南さんはどうしてか突然無口になってしまって、何を言っても「あっそ」としか答えてくれませんでした。
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「私、このお話を皆にも読んでほしいわ」
「やだよ。第一、読んでくれる人なんていない」
「もったいないわよ。こんなに素晴らしい物語、たくさんの人に読んでもらわなくちゃ。人生とは昼休みみたいなものよ」
「お弁当が美味しいねってか?」
「時間が決まっているの、その時間の中で素敵なものに触れなきゃ。私は皆の四十五分でこの南さんのお話を読んでほしいわ」
私は本当のことを言ったのに南さんは「お世辞はいいなだよ」と言って、私の手からノートを取り上げました。南さんは相変わらず、ノートを長くは持たせてくれません。本当は家に持って帰ってすぐに読み終わりた買った南さんの物語。屋上に来ないと読めないので、何日もかかってしまいました。私がジュースやアイスで汚してしまうと思っているのでしょうか。私は素敵が好きだから、そんなことはしません。
「まあいいわ。私が南さんの一人目のファンね。次のお話もとっても楽しみにしてる」
南さんはやっぱりこっちを見ずに手をひらひらと振って、突然空から何かが降ってきた見たいに上を向いて、こんなことを訊いてきました。
80(4:52)
「そういえば、幸せが何かの答えは見つかったのかよ」
私の心にはまだまだだ南さんの物語が足跡を残していたけれど、人の話を無視しちゃいけないのはひとみ先生から習っていたので、私は南さんからの質問にきちんと答えます。
「いいえ、色々思いつくことはあるのだけれど、皆をびっくりさせて先生に褒めてもらえるような答えはまだ思いつかないわね。実はあんまり時間がないのよ、今度の授業参観で考えの途中まででもいいから皆の前で発表しなくちゃいけないの」
「へえ」
南さんは、言葉を私に添わせるように相槌を打ってくれました。その相槌は私の体にすっとしみこんでいくようで、とても心地いい。南さんの膝の上の彼女は、お腹をくすぐられて、やっぱり気持ちよさそうにしています。
「もし何か思いついたら考えてね」
「簡単に思いつくかよそのあもん。でも、そうだな。最近はこうやってこの子の相手してる時はちょっとだけ、いつもより幸せ」
自分が褒められていることが分かるや否や、尻尾の短い彼女は南さんの手を舐めて「ナー」と鳴きました。上目づかいは女の武器だなて、プレイガールのつもりかしら?小さな友人を睨め付けながら、私は南さんが幸せであることがうれししくなりました。
81(6:58)
私は、私の好きな人達は皆幸せになって、嫌いな人は皆いなくなればいいと思っているから。
見ると、南さんの手首のかさぶたは、もう取れていました。
私はその場で立ち上がり、青い空に手が届くように思い切り背伸びをしました。今は棚の高いところにあるコップも取れないほどに小さいけれど、いつかは校庭にあるバスケットゴールに手が届くほどにはなってやろうという背伸びです。
私が立ち上がるのを見ると、小さいな彼女はこちらを見て名残惜しそうに南さんの膝の上から下りました。南さんはやっぱりこっちを見ません。
「じゃあね、南さん。また来るわ。次のお話早く書いてね、楽しみにしてるから」
「勝手にしろ」
「そうだ!幸せが何かって答え、まだわからないけど、でも私は南さんの物語を読めて幸せだったわ」
南さんは、また何も言わないで手をひらひらと振った、と、そう思ったのですが違いました。本当に小さい、子どもである私の声よりもずっと小さな声で言った言葉が、私の耳に風のように届きました。
「ありがと」。
南さんのいる屋上を気持ちのいい心いっぱいで離れた後、私は久しぶりにアバズレさんの家に向かうことにしました。久しぶり、と言っても何日か言ってなかっただけ。
82(8:44)
でもその何日かは、私とアブズレさんにとっては、いつもなら会わないはずのない日々なのです。
アバズレさんも、やっぱり私と同じことを思ってくれていました。川沿いにあるケーキみたいなクルーム色の建物、そこにつてものようにいてくれたアバズレさんは、コーヒーを飲みんがら私を迎えてくれました。
「久しぶりだね、お嬢ちゃん。元気にしてた?」
「ええ、落ち込んだこともあったけど、私はとても元気よ」
「そうか、お嬢ちゃんがキキでこの子はジジだったのか」
「まだ残念ながら魔法は使えないの。だからどっちかっていうとチャーリーとスヌーピーね。女の子と男の子、猫と犬って違いはあるけれど」
「いつか使えるようになるさ。ほら、入りな。今日はたまたまケーキと、それからミルクもある」
「いただくわ!」
アバズレさんの家でケーキを食べながら、私はここ数日どうしてアバズレさんのところに来られなかったのか、お話をしました。それから、南さんについて、アバズレさんに訊こうと思っていたことも、お話ししました。
「南さんは頭がおかしくないわ。だって、素敵なお話を書けるんだもの。だけれど、がおかしくないのに、自分の体を切るなんて、不思議なことだと思ってしますわ。アバズレさんには、南さんがどうしてそんなことをするのか、分かる?」
83(10:29)
アバズレさんはショートケーキの最後のひとかけらを食べながら眉毛と眉毛の間に力を込めました。アバズレさんの眉毛は私のものと違って、シャキーンという音が鳴りそうな綺麗な形をしています。
「んー、そういう人はたまに見る。んで、本人から理由も聞くんだ。血が見たいとか、好奇心とか、落ち着くとか」
「南さんも落ち着くって言ってた」
「うん、それで、お嬢ちゃんは納得出来た?」
「全然よ。試しに自分の手首をつねってみたんだけど、ただ痛くて赤くなっただけだったわ」
「そうだろう?、結局さ、やってる人にしかわからないんだと思う。でも、わからなくてもいいんだと思う。特にお嬢ちゃんはさ。お嬢ちゃんはその子の傷を見て、自分を傷つけるなんてやめてほしいと思っただろ?」
「ええ、友達が痛い思いをするなんて嫌よ」
「そうだ。もしお嬢ちゃんが、自分を傷つけて理由がわかったとして、もしそんなことを始めたら、
84(11:49)
私もやめてほしいって思う。だから、分かる必要なんてないと思う。前も言ったように、プリンの甘いに部分だけを好きでいられるのは、素敵なことだ」
「だけど、だけどね。アバズレさん。私は、南さんの気持ちをわかりたい気持ちもあるの」
「うん。そうだね」
アバズレさんはまるで人み先生見たいに指を一本立てました。
「お嬢ちゃん例えば今、私が頭の中で思い浮かべてる数字が分かる?」
突然の不思議な質問に、私はじっとアバズレさんの目を見て頭の中を覗けないかと試してみました。でも、私にはまだ魔法は使えないので、アバズレさんの頭の中はいつまで経っても見えませんでした。
「は、八?」
「外れ。正解は二十四。ほらね。誰も魔法みたいに人の心を分かるなんて出来ないわけだ。だから、人には考えるっていう力がある。お嬢ちゃんはその友達のことを分かりたい。でているのか、そうして、少しずつ知ってあげればいい。分かる?」
「ええ、凄くよく分かる」
「やっぱり、お嬢ちゃんはかしこい」
85(13:30)
アバズレさんは私を褒めてくれましたが、違うと思いました。
本当に賢いのは、すぐにとてもわかりやすい答えをくれたアバズレさんだと思います。私はアバズレさんのゆっくりとした動きを丁寧に丁寧に見てしまいます。熱いコーヒーをカップから飲む綺麗で賢いアバズレさんはやっぱり、私がなりたい未来の私にぴったりと当てはまりました。それに南さんのように物語が作れて、おばあちゃんのようにお菓子が焼ければ、私は完璧に素敵な大人になってしまうことでしょう。ついでに、魔法も使えるようになれば言うことなし。
賢くて素敵なアバズレさんに、やっぱり私は今日もオセロで勝てませんでした。
帰り際、アバズレさんが、「授業参観頑張って」と言ったので、「もちろん、かしこいところを見てもらうわ」と約束をしてから私は夕焼けの下、家に帰ることにしました。
ミルクを飲んで上機嫌な彼女と川沿いの堤防の上を歩きながら、近くに迫った幸せについての発表会に向けて、夕焼けに相談をしました。もしかしたら、アバズレさんが言っていた、考える力は凄く大きなヒントかもしれません。
と、もうすこしで堤防を下りる階段にたどり着くというその時。私は何も気にせず進もうとしていたので、道の前から来る彼の存在に、少しだけ気が付くのが遅れてしまいました。
「あら、桐生くん。ごきげんよう」
86(15:34)
私が声をかけると、荻原くんは、「こ、小柳さん」と言って一緒に歩いていた大人の後ろに隠れました。私が連れていた尻尾の短い彼女も後ろに隠れ、この場所の人見知りの多さが面白くて、私はくすくすと笑ってしまいました。
笑いながら、もう一つ嬉ししいことに気がつきました。私は、少し前からずっと気になっていたことの答えを知ることが出来たのです。
「こんにちゃ」
桐生くんと一緒に歩いていた男の人が優しい声をかけてきました。彼は、私が近頃何度も丘の下の公園で見かけていたその人でした。そう、どうしても思い出せなかった彼は、桐生くんのお父さんだったのです。一度だけ、運動会で見たことがあったのですが、その一回きりだったから思い出せなかったのでしょう。私は、喉に詰まったものが取れたような、とてもいい気持ちになれました。
「こんにちゃ!」
私は元気に、桐生くんのお父さんに挨拶を返します。まだお父さんの後ろに隠れている桐生くん。まるで私がいじめている見たいだからやめてほしものです。
桐生くんのお父さんは、今日はいつも私が見るひどく落ち込んだ顔はしていませんでした。桐生くんのお父さんも、私のように色々あったけれど、今は元気なのでしょう。
87(17:11)
それは、父もいいことです。
私と桐生くんのお父さんはありふれたお話をいくつかしました。
「それじゃあ、また今度の授業参観で」
そういう挨拶をしてから私お桐生くん親子はお別れをします。桐生くんは、最後に、「じゃ、じゃあね」というまで何も喋りはじませんでした。
「あの子、あんなんだけれど、とえても素敵な絵を描くのよ」
後から、小さい友達にそう教えてあげると、彼女は半信半疑なのか、首を頷げて、「ナー」と鳴きました。単に、人間の男の子には興味がないだけなのかもしれません。
友達と別れ家に帰ると、珍しいことがありました。お母さんが私よりも先に家にいて、しかも夜ご飯まで出来上がったのです。それも、私の好きなメニューばかりだったのですから、私はもしかすると自分の誕生日を間違えて覚えていたかしらと思ったほどです。
お母さんの料理は美味しいです。お母さんは忙しいので、近所のスーパーでお惣菜を買ってくれることもとても多いけれど、やっぱりお母さんが作ってくれる料理は格別です。
私は大好きなお母さんの大好きな料理を美味しく食べていました。
でも、途中で、「あれ?」と、おかしなことに気がつきました。お母さんが、全て料理に手をつけず私を見ているのです。私はそんなにがつがつしていたかしらと恥ずかしくなりましたが、どうやら、そうではありませんでした。
88(19:29)
私がお母さんの方を見ると、お母さんはとても真面目な顔をして、私の名前を呼びました。そのことに、とてもきらな予感がしました。大人、そう、子供もはそんなことはありません、大人です。大人がこういう真面目な顔をするときは、なぜかとても嫌なことを言う時がほとんどなのです。私が好きあなひとみ先生のあの真面目な顔えとは種類が違います。怖い先生が窓を割った犯人を探すときもそうでした。お父さんが私の誕生日をおぼれててプレゼントを買い忘れた時もそうでした。たまに、相手をびっくりさせようとして、とても嬉しいことの前にそういう顔を作るときもあるけど、そういう時は凄く珍しい。
それでも私は、これが私をびっくりさせようとしているお母さんの演技だったらどれだけ素敵だろうと思いました。しかし、そうでないことは、お母さんの言葉が「ごめんなさい」から始まったことで、すぐに分かりました。
お母さんは言いました。お母さんもお父さんも、当日遠くまで出張に行かなくちゃいけなくなった。だから、本当はとてもいきたかったし楽しみにしていたし心から残念なのだけれど、授業参観には行けなくなった。
お母さんの言ったことを聞き終わった私は、本当に一歩だけ、部屋の中が暗くなった感じがしました。その暗さにならって、私はその場でただ落ち込んで、唇をとがら背ながらハンバーグを食べることも出来たでしょう。
89(21:39)
でも、そうはしませんでした。1秒暗くなった感覚と、これまで私がどれだけ楽しみにしていたかと言う気持ちを、まるで縮んだバネみたい使って爆発してしまったのです。
「来てくれるって言ったじゃない!」
私の声が大きこと、お母さんは知っている
でしょう。なのにお母さん驚いた顔をしたのは、私がお母さんに対して怒ったのが久しぶりだったからです。
久しぶり、だったけれど、本当はずっと思っていたことがありました。
「いっつも!いっつもお母さんは約束を破るわ!お父さんもよ!」
「本当にごめんさい。でも、どうしても行けないの」
「どうしていつも仕事を選ぶの!なんで!
お母さんは説明しました。仕事が大切な理由。きちんと、私にもわかるようにわかりやすく。でも、私はお母さんにそんなことを説明してはしかったわけじゃありません。
私は思いました。お母さんは私のことをわかってない。それはしょうがない。でもアバズレさんのいうように、考えてくれてすらないじゃないいって。
だから、そんなこと、絶対に言っちゃいけないってこと、かしこい私、はわかっていた、ははずのに、言ってしまいました。
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「だったら、お父さんもお母さんも仕事が忙しくない家に生まればよかった!」
お母さんを傷つけてしまったこと、すぐにわかりました。でも、止められなくて、お母さんもそうだったのでしょう。「しょうがないでしょう!」とお母さんが怒鳴るのを聞いて、私はもうそれ以上は何も食べずに部屋んい戻り、ベッドにもぐりみました。
途中までしか食べなかった晩ご飯。お服はすぎませんでした。
人生は、ヤギみたいと言ったけど、もしかしたら宇宙人みたいなものかもしれないと思いました。物語や、嬉しさだけでなく、私は悲しさや失望でもお服がいっぱいになることをこの時初めて、知ったのです。
でも、やっぱりお服が空いてお父さんもお母さんも寝ている夜中、私はキッチンとおいてある食パンを食べました。
次の日の朝、お母さんが用意してくれた朝ご飯は、一口も食べませんでした。
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