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Show Notes
第11
また、同じ夢を見ていた。
目覚めて、まず思いました。また、同じ夢を見ていた。
目を何度か瞬かせ、腕だけを動かして、アラームを止める。遅れてお腹の上に控え目な重さを感じて、私の寝がえりを邪魔する居候を持ちあがて床に下ろします。彼女は下手を去れば家が火事になっても起きないかもしれないhほどの寝坊さんので、大少乱暴にしても大丈夫。
ベッドから下りて立ち上がり、カーテンを開けるとたっぷりの陽光が部屋に差し込んできました。うん、今日も快晴。いい天気。
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彼女と並んで、朝ご飯を食べながら、彼女が何を考えているのかは知らないけれど、私は夢のことを考えていました。他ならない、さっきまで見ていた夢のこと。
私は、子供の頃の夢をよく見ます。それも決まってみるのは小学生の時、他にも大切な思い出はたくさんあるのに、見るのはあの時の夢だけ。
あなたはちゃんと、幸せになっているの?って。
朝食後のコーヒーなんて似合わない私はもう一枚オレンジジュースを飲みながらテレビの電源をつけました。何かやっているのかとザッピングだけど、やっているのは昔のアニメと、悲しいニュースと、誰かを全員でいじめる、まるで小学生が集まって作ったようなワイドショーだけ。とある番組では見るからに違そうな大学の先生が、15年間まるで変わらないことを言っていました。
私はテレビを消して、足元の彼女をそこに残したまま、隣の仕事部屋に移動します。2LDKのこの家に住んで、もう三年。引っ越す時、探している家の一番の常用事項を不動産屋さんに伝えると世にも奇妙な顔をされました。その不動産屋が頑張って探してくれた、外からみるととっても美味しそうなこの家を、私は気に入っています。
仕事部屋には余計なものは何一つありません。大きめの机と動く椅子、その上にノートと鉛筆、目覚まし時計と小さなパソコン。本棚に、本達。それから、小さな居候が大人しく寝ていられる毛布だけ。
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椅子に座って、まずは閉じられたノートを聞いて昨日の復習をします。それから鉛筆を持って、早速仕事に取りかかるのです。私の仕事に出勤はありません。決められた時間も残業も、遅刻も早退もありません。持ち物も必要なく、必要なのはノートと鉛筆と私の頭と、この世界中にある全てのものだけ。
夢中になると私はすぐに時間を忘れるのです、机の上の目覚まし時計でアラームを仕掛けます。
今日もやっぱり時間は光の矢のように過ぎ去って、自分で仕掛けたアラームにびっくりするというお約束を繰り広げた私は、ノートに小さな丸を打って席を立ちます。いつもならお昼ご飯もそっちの毛でやり続ける仕事。だけど今日はそうもいかない。大切な用事があるのです。2度寝をしている居候を横目に洗面所で長い髪の毛をセットして、わざとらしくないお化粧を施し、いつもより少しだけメルヘンチックで洒落たスカートをはきます。そこにお気に入りのリュックを背負えば、出かける準備は万端です。
「ナー」
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いつの間にか起きていた彼女が、足元で眉間に皺を寄せながらこちらを見ていました。
「何、せっかくのデートのにリックはやめろって?いいの、人生ってリックみたいなものだから」
「ナー」
「背買うものがあった方が、背箱も伸びるの。それにランドセルみたいで大好き」
彼女には私の冗談は理解できなかったみたい。そんなことより彼女も早く外に出かけたいお菓子でうちのドアを爪でカリカリとし始めました。うちに居候をしてる彼女は、日中はいつも外にお出かけをshています。どこに行っているのかはしれません。もしかすると、どこかの女と子と丘を登っているのかも。
居候の彼女に急かされ、少し早いけれど私は家を出ることにしました。リュックには読みかけの本もペンもノートも入っている。素敵な時間を過ごす準備は万端です。
ドアを開けると、爽やかな風が私の顔を叩きました。髪とスカートが揺れてまるで動かず気分になれます。もうすぐ、夏。
「あ、マーチ」
私が鍵を締めるのも持たずに行ってしまおうとする薄情な居候の背中に呼びかけると、彼女は流し目でこちらを振り向きました。みょうに色気のあるその目は、半分野良猫みたいな生活の中、一体何を経験して得たものなのか。気になるけど、訊いても彼女は教えてくれません。
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「日が変わるまでには帰るから、どこかで時間潰してて」
「ナー」
気にしないでいい。彼女はそう言い残して長い尻尾をゆらゆら揺らし軽いステップで行ってしまいました。後ろ姿はちょっと違うけど、彼女の所作はいつかの悪女を思い出させます。
さて、私も行こう。
「しーあわっせはー、あーるいーてこーないー、だーかーらあーるいーていーくんだねー」
私は口ずさみながら一つ伸びをして、あの時よりずっと高くなった目線で見る景色に今日の一歩を踏み出しました。
幸せとは、自分が嬉しく感じたり楽しく感じたり、大切な人を大事にしたり、自分のことを大事にしたり、そういった行動や言葉を、自分の意思で選べることです。
また、同じ夢を見ていた。あの夢の見ると、いつも思う。
まるで、自分に訊かれているみたい。あなたは今、幸せなのかって。
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その間いに答える時、私は今でも自分の中の幸せの定義が変わっていないことを確認してから、胸を振って頷いてみせるのです。
子供の頃、人生とはなんて大人ぶったことを言っていた賢い女の子は、周りを思いやることも出来ず、味方も友達もいませんでした。だけれど女の子には運がいいことに導いてくれる人達がいて、彼女達のおかげで、その女の子は幸せなまま大人になることが出来ました。。
導いてくれた人達のことを私は今でもしっかりと覚えています。
アバズレさん、南さん、おばあちゃん。
私は段々と知っていきました。
アバズレさんという言葉の意味も。彼女がやっていたのだろう仕事のことも、南さんが本当は南さんじゃなかったということも。あの授業参観の日に一つの飛行機事故があったことも。おばあちゃんが言っていた、私に先を見る力があるということも意味も、もう知っています。
彼女達は私を助けてあげることが出来たのでしょう。そのために、出会ったのでしょう。
大人になって、私は不思議の理由を知ってしまいました。でも、それを悲しいとは思っていません。
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だって、私は今でも彼女達のことが大好き。だから自分で選んでいるのです。みなみさんのようになりたくて、仕事に使っているのは今でも普通のノートだし、アバズレさんのようになりたくて、同じ色の建物に住んでいるし、おばあちゃんのようになりたくて、少しずつお菓子の作り方を勉強しています。まだ、魔法は使えないけれど。
あれから結局、私は2度と彼女達と会うことが出来ませんでした。
私が彼女達のような素敵な大人になれているのかはわからないけれど、最近の私の髪は南さんにそっくりだった顔から、段々アバズレさんの顔に似てきています。何十年後かには、きっとおばあちゃんに似てくれのでしょう。
だけれど、私の人生は誰のものとも違います。
誰のものとも違う、自分の幸せを選ぶことが出来るのです。
幸せは、あっちからやってくるものではなく。
こっちから、選んで手にするものだから。
また、同じ夢を見ていた。あの夢を見ると、いつも思う。自分に訊かれている見たい。
あなたは今、幸せなのかって。
その問いに答える時、私は自分の幸せにお定義と一緒に、いつも最近におばあちゃんが私にくれた言葉を思い出すのです。
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いいかい、人生とは。
全て、希望に輝く今のあなたのものです。
大きなアトリエの中、私は彼の邪魔にならないよう隣に椅子を置いて腰掛けます。
「サイン描くだけだよ?」
広い空間があるのに、わざわざ並んで座った私に彼は笑いながら言いました。だから私も同じように笑って答えてあげました。
「また、同じ夢を見てたの」
私は彼に夢の説明をしませんでした。だけど彼はそれ以上私がそこにいることを疑問に思ったりもしませんでした。彼はペンを持って、キャンバスの右下に自分のサインを描きました。中学生の頃から彼が使っているサイン。外国人から怖がられるかもしれないと「あなたを殺す」と聞こえる自分の名前の意味を反対にしたサイン。
「この絵、出展するんだっけ?」
「。。。いや」
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彼は、一面に咲いた名の花畑の絵を見て言いました。
「これは、君にあげる」
私には、それが彼のプロポーズだということがわかりました。恋人になったばかりのに、プロポーズとは早すぎるんじゃない?なんて思ったけれど、でも、きっとこの絵にはこれまでの想いを全部詰めてくれているのだとわかりました。
だけど、やっぱり大事なことはちゃんと言葉にしてほしい私は言いました。
「いくじゃなしっ」
彼は笑って、きちんとそれを言葉にしてくれました。
それから私が彼のプロポーズにどう答えたのか。
今でもまだ隣の席に座る彼と私が、この後どうなったのかは、薔薇の下で。
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