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Show Notes
私は、つい顔をあげてアバズレさんの顔を見てしまいました。涙と鼻水でそれはそれは不細工な顔を、見たかったのです。
「それからの日々は本当に楽しかった。友達なんて、いなかったから。きっと、もっと早くこうして誰かを好きになっているば良かったんだって、気がついた。だけど、過去はもう戻ってこない」
時間は戻ってこない。私は、そう行った南さんのことを思い出しました。
「私はね、お嬢ちゃんがどんな人間になっていくのか、楽しみだ。だけど、心配もしてる。そうしてか分かる?」
198
私は首を横に振りました。
「お嬢ちゃんが、その子にそっくりだから。お嬢ちゃんは、その子みたいにあ人生を歩いちゃいけないんだ。お嬢ちゃんは、幸せになるなくちゃいけない。だから、誰とも関わりを時たないなんて言っちゃ駄目だ」
私は、アバズレさんの言うことの意味を考えながら、もう一度アバズレさんの手をぐっと握り返しました。
私がその握る力に込めた気持ちは、迷い、です。私はまるで迷惑の中に入れられた気分になっていました。
私はかしこいから、アバズレさんの言っていることの意味はわかっていました。でも、意味が分かることと、それを本当に出来るのかは別の話です。なぜなら私は、本当に今日、もうこれ以上、私は傷つける人達の誰とも会いたくないと思ってしまったのですから。それに、もし私がその考えを変えても、アバズレさんやおばあちゃん以外の誰が私と仲良くしてくれるのでしょうか。荻原くんにも桐生くんにもいやわれた私に、行き先なんておありません。
私は、私に似ている「その子」の話をもっと聞きたくなりました。
199(3:00)
「そのこも、本が好きだったのね」
「ん、ああ、お嬢ちゃんと一緒だよ。本が大好きで、ずっと本を読んでた。一度は物語を書く人間になろうかと思ったんだけど、読んでくれる人が周りにいなくて、いつの間にか忘れた」
「お父さんとお母さんは?」
「二人仲良く、元気で暮らしてるはずだ。もうずっと会ってない。前に一度、家に帰ろうかと思って家に行ったんだ。だけど、チャイムを押せなかった。会うのが、怖かっただと思う」
「本のことを話せる友達や、一緒にアイスを食べる友達や、尻尾の短い友達は、いなかったの?」
「うん、いなかった。だから、誰も間違ってるって言ってくれなかったんだ」
「じゃあ、私みたいに決まった口癖はあった?」
土砂降りの雨みたいな、不躾な私の質問にもアバズレさんは一つ一つ、きちんと答えてくれました。それが嬉しくて、私はまた質問を重ねてしまうのです。
「口癖か」。アバズレさんは、遠い日のことを頑張って思い出すように、窓の外に目を向けました。私の目は、アバズレさんの顔にだけ、向いています。
200(4:37)
アバズレさんは指をあごに当てて、私のためにきちんと考えてくれました。
「口癖、うん、いつも言ってることがあった。どうして今まで忘れたんだろってくらい。
うん、その子の口癖は。。。ってあれ?」
アバズレさんは、窓の外に向けていた目を私に向けて、まぶたをしぱしぱと何度も、瞬かせました。その目が瞬きをやめると今度はまぶたが千切れてしまうんじゃないかってくらいに聞いて、一緒に、アバズレさんの口も大きく聞きました。
「どうしたの?」
「私の。。。子どもの頃の口癖、人生とは、だ」
アバズレさんはあまりに驚いたせいでしょう、ゲームの約束みたいだった、「その子」と呼ぶことも忘れてしまった見たいでした。私も、驚きました。
「私と、同じよ」
アバズレさんは、震える唇で言いました。
「子どもの頃、漫画の「ピーナッツ」が好きだった。日本語に訳されたやつをよく読んでて、そこで、主人公のチャーリーが言うんだ。人生とは、アイスクリーム見たいなものだって」
「舐めることを学ぶなきゃ。。。」
201
「そう、そうだ。もしかしてお嬢ちゃんも」
驚きという心の力に任せて、私は何度も首を縦を振りました。
「私も、チャーリーの台詞が好きなの。とても賢くて、魅力的なジョック」
「なんて、緑だ。。。」
縁、アバズレさんはそう言いました。運命や、奇跡じゃなくて、縁という言葉を使うアバズレさんは、やっぱり素敵だと思いました。
縁という字は知っています。緑という漢字にとてもよく似ているのは、生き物がいつか死んで土に帰って、そこに緑色の草花が生え、それを食べて他の生き物が生きていく、そういう不思議な繋がりを指すからなのではないかと私は思っています。だとするなら、私とアバズレさんが出会ったのは、やっぱり緑なのだと、思います。
私は、緑という言葉に手を合わせて感謝します。もちろん合わせる手は、アバズレさんと。
言わなくてもアバズレさんは私の気持ちをわかってくれた見たいでした。彼女は、にっこりと笑って、私の手の半を包み込んでくれました。
「やっぱり、お嬢ちゃん。誰とも関わらないんて、駄目なんだ。人と関われば、こういう素敵な出会いがある」
203(802)
私は、荻原くんの顔を思い出します。思い出すだけで、私の心は、また黒色に染まっていくようでした。
「無視、されたわ」
「そっか、てっきり嫌いって言われたのは、その子にかと思ってた」
「違うわ。嫌いって言われたのは、前に話した、学校に来なくなったこ子よ。あれから、その子の家に行ったの。伝えたかったのよ、私はあなたの味方よって。だでど、その子は私が思ってたよりもずっといくじゃなしだったの。だからそれを言ったら、その子に意地悪をする子達よりも、私のことが一番悪いって言われちゃった」
「そう。。。それはお嬢ちゃんが悪いな」
思ってもみなかった、アバズレさんの答えに、私は口から出るはずの言葉を頭の中に忘れきてしまいました。どうして?どうして、私が悪いの?私は、助けてあげようとしたのよ。思うけど口から出ない言葉。それをわかってくれたのかはわからないけど、アバズレさんは私の頭を撫でました。
「そんで私も悪かった。お嬢ちゃんにヘントの出し方を間違ったな。お嬢ちゃんは賢いけど、私と同じで人に関してはそんなにかしこくない」
アバズレさんは意地悪にひひっと笑ったけど、アバズレさんと一緒だという一言で嫌な気にはなりませんでした。
204(11:53)
じゃあ、賢くない私にアバズレさんは何を教えてくれるのでしょう。そう考えていると、アバズレさんは今までのお話とまるで関係のない質問をしてきました。
「お嬢ちゃんは、給食で嫌いな食べ物はある?」
私はアバズレさんが今どうしてそれを聞きたいのかわかりませんでした。でも、アバズレさんからの質問を私が無視するわけありません。
「納豆が嫌い。あれは、変な匂いがするもの」
「あー、私も嫌いだった」
「だけど給食って残しちゃいけないのよ」
「そうそう。体にいいからね、納豆は食べなきゃいけない。じゃあさ、お嬢ちゃん。お嬢ちゃんがその納豆を、今、勇気を出して食べようって思ってる時に先生から、さっさ食べなさい!って怒られたら、どんな気分になる?」
「私の先生はそんなことはしないけど、気に入らないわね。怒っちゃうかも、そして納豆をもっと食べたくなくなるわ」
アバズレさんは、こくりと頷きました。
「お嬢ちゃんが、学校に来ないその子にしたのは、それと同じなんじゃないかな」
205(13:17)
「。。。。」
経験はありません、話にも聞いたことがありません。でも、きっと雷に体を打たれたらこんな漢字なのだわ、と私は本当にそう思いました。それくらい、私の頭は壁を打った時よりも衝撃を感じて、話tしの手足は七五三ですっと正座をした時よりも痺れたのです。
そして、心の中の黒色が、パチパチと音を出しはじめました。
「そうか、そうだったのね」
一緒に気がついたのは、私がした自分勝手すぎること。
「戦おうとしてたのかもしれないんだわ」
「ああ、そうかもしれない。もしかしたら本当のいくじなしなのかもしれないけど、でも、それなら、お嬢ちゃんに怒ったりしないんじゃないかな。その子は、お嬢ちゃんに何かを伝えたかったんだ。無視するんじゃなく、何かを」
やっぱり、アバズレさんは私なんかよりもずっとずっとかしこい。それは、私が思ってもいない買ったことでした。私は決めつけていたのです。彼はいくじなしで弱くて、戦うことなんて絶対に出来ないって。もしかしたら彼は、もう少しで戦おうとしていたかもしれないのに。
「それに、言い返すことだけが戦うことだなんて限らない。彼にとって戦うってことは、我慢しながら、いつか周りの皆を見返すような、絵を描くことなのかも」
206(15:14)
私は、彼がどれだけ馬鹿にされて絵を隠しても、絵をかくのをやめようとしていないことを思い出します。
「それは、お嬢ちゃんとは戦い方が違うのかもしれない。だけど、お嬢ちゃんもその子も、きっと同じだ。私も一緒。悔しいと思うことも悲しいと思うこともある。そんなの本当は嫌だし、それに、本当は味方が欲しい。嫌いって言っちゃたのも、きっと彼は後悔してる。お嬢ちゃんは他の子より賢い。でも、他の子達もちゃんと考えてるんだ」
それはアバズレさんが前にくれたヒントでした。皆違う、でも皆同じ。
「私、どうすればいいの?」
「お嬢ちゃんが、落ち込んだ時、どうして欲しいか考えらばいい。それを少しだけ、その子に合わせて考えれれば完璧。お嬢ちゃんは、落ち込んだ時、誰かにそのことを怒られたい?」
「いいえ、横にいてくれたり、話を聞いてほしい。その後は一緒に甘いものを食べて、遊んだりしたい。」
「そう思うなら、そうすればいい」
私は、頷こうとしました。でも、たった一つ残った心配が私の首の動きを止めたのでうす。
207
「もし、本当に嫌われてたら」
言うと、アバズレさんは私の頭をもう一度撫でてくれました。
「そんなことないと思うけど、でも、もし万が一そうだったなら、私が慰めてあげる。それからまた一緒にどうすれか考えよう」
「。。。。」
「大丈夫さ、お嬢ちゃんには勇気があるんだろ?」
アバズレさんはそう言って、私の背中を叩きました。その一発は、まるで前にテレビで見たバイクのエンジンを動かすた目にすれキックと似ていました。アバズレさんの手の半からの力が私の体の中のエンジンに、火をつけたように感じたのです。
「そうね、やってみるわ。私、言ったのよ」
「なんて?」
「自分から動かなきゃ始まらないって、桐生くんに言ったんだもの。だから、やるわ。ねえ、アバズレさん。。。。」
私の言葉が止まったのは、誰かに手で口を押さえれたからでも、苦いものを飲まされて声が出なくなったからでもありませんでした。
「アバズレさん?」
208(18:14)
さっきまでの笑顔とはまるで違う、アバズレさんの顔を見てしまったからです。
その瞬間、部屋の中なのに、風が吹いたような気がしました。
アバズレさんは、また何かに驚いた顔をしていました。でも、その度合いが、まるで今までと違ったのです。どうにかこうにか、それをたとえるとするなら、そう、誰かと口癖が一緒だったことなんて全て忘れてしまうみたいな。宇宙人と魔法使いと地底人を一緒に見てしまった見たいな。まるで、雷に打たれた見たいな。そんな顔をしていたのです。私はその顔をどこかで見たことがあります。
「どうしたの?」当然、私は訊きます。アバズレさんは、まるで私がモンスターに変身しちゃったのを見てしまったような顔のまま、一言、喉の奥から引っ振り出してきた見たいな声で咳きました。
「桐生、くん。。。」
「ええ、そうよ、絵描きの桐生くん」
私の言葉を受け取った途端でした。もしかして私の言葉は大きな大きな花束になってしまったのかもしれないと思いました。テレビで見た、大きな花束を貰ってプロポーズを受けた女の人と、アバズレさんが、同じ顔をしたから。
「どうしたの?」
209(20:10)
私はもう一度訊きました。でも、アバズレさんはその質問には答えてくれませんでした。
「もしかして。。。なのか?」
当たり前の質問、私は、「ええ」と頷きます。
驚き、それが収まらない顔をしたまま、アバズレさんは突然、目に涙をいっぱいにためていました。大人の涙ほど子どもを驚課すものはありません。なので私は驚きました。どうしてアバズレさんが泣いているのか、
210(22:40)
そうして、こうも言いました。「ごめんな、ごめんな、ごめんな」。アバズレさんは、私に何を謝ることがあるのでしょうか。
優しくて、賢くて、色んなことを教えてくれて、私にヒントをくれて、デザートをくれて、私をいつでも楽しくて幸せな気分にしてくれる、素敵なアバズレさん。
彼女が私に謝ることなんて、何一つあるとは思いません。
なのに、アバズレさんはいつまでモイ妻でも泣き続けました。謝り続けました。少しずつアバズレさんはその理由を言ってくれました。でも、やっぱり意味はわかりませんでした。
「ごめんな、ごめんな、幸せじゃないなんて言って」
「。。。」
「こんな私になっちゃって」
「。。。。」
「アバズレさんなんて呼ばせて」
「。。。。」
「本当にごめんな。。。。ナノカ」
211(24:05)
私の名前を読んで、アバズレさんはまた私をぎゅうっと抱きしめました。ちょっとだけ苦しくて「うぐっ」と声が出ても、アバズレさんは放してはくれませんでした。
その時、私は一つ、不思議なことに気がつきました。そのことに気がつくと、私はもう一つの不思議なことにも気がつきました。
私は、賢いから覚えています。アバズレさんはさっきと今で2度、私の名前を呼びました。あの時、南さんも私の名前を呼びました。だけれども私はなぜか、アバズレさんにも南さんにも、自分の名前を言い忘れていたことに気がづいたのです。
どうしてアバズレさんや南さんが私の名前を知っているのか、そして、どうして私が今までアバズレさんに名前を言わなかったのか。二つの不思議が私の頭の中をぐるぐると回ります。
不思議なことは、かしこいアバズレさんに訊いみましょう。私はアバズレさんが泣いている耳元で、この不思議なことを全て話しました。
すると、アバズレさんは私の体を放して、正面に座り直しました。アバズレさんの顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっていました。泣いた顔は、皆同じになるのね。私は、そう思いました。
「何も、不思議じゃない。今、やっとわかったんだ。どうしてお嬢ちゃんがあの日、来たのか。どうして私と出会ったのか」
212
不思議じゃないことなんて、全然ありません。やっぱり不思議なことは不思議なこと。私が首を傾げると、アバズレさんは泣いたままにっこりと笑い、右の人指し指を立てました。
「いいかい、お嬢ちゃん。人生とはプリンと一緒だ」
「苦いところを喜ぶ人もいる?」
「いいや」
アバズレさんの髪が、横に揺れます。
「人生には苦いところがあるかもしれない。でも、その器には甘い幸せな時間がいっぱい話まってる。人は、その部分を味わうためにう生きてるんだ。ありがとう、私は、お嬢ちゃんのおかげで、やっと思い出せたんだ」
「何を?」
「私も、本当に苦いコーヒーやお酒より、甘いお菓子が大好きだった。もう忘れない」
アバズレさんは、また私をぎゅっと抱きしめてました。アバズレさんがなんでそう何度も私を抱きしめるのか不思議だったけど、いつの間にか、私はその不思議を解く気にはならなくなっていました。アバズレさんに抱きしめられている時間は、私はとって、間違いいなくこの人生の甘い部分だったからです。
213(27:59)
やがてアバズレさんは泣き病んで、私がどうして泣いたのか訊いても、そのことを説明してくれることはありませんでした。アバズレさんは言いました。
「いつかきっと、自分の力で知ることが出来る」と。代わりに、アバズレさんがくれたのは、とても珍しい、アバズレさんが私のためにかってきてくれたおやつでした。
「お嬢ちゃんにぴったりだ」
そう言いながらくれたプリンには、黒い部分がありませんでした。器に話め込めれた全部が甘い黄色の部分。私はそれを食べながら、たっぷりの幸せを味わったのです。
二人でプリンを食べながら、私達はいつも通りにオセロをしました。勝敗も、いつも通り。だけどいつか私の方が強くなってみせます。
帰る前、私はアバズレさんの手をもう一度握って、明日への勇気を貰いました。アバズレさんは私の手をぎゅっと握り、それから私の体もぎゅとしてから、「絶対に大丈夫」。
私が靴を履いてドアから出ようとすると、アバズレさんが何かを思い出したみたいに「あっつ」と言いました。
「どうしたの?」
214(29:19)
「いや、おばあちゃんは、今、幸せなのかなと思って」
私は、おばあちゃんと前にしたお話を思い出しました。
「ええ、幸せだったって言ってたわ」
答えると、アバズレさんは本当に嬉ししそうにわって「よかった」と言いました。それから私に手を振ると、いつものように言いました。
「じゃあね、お嬢ちゃん」
「ええ、また来るわ」
アバズレさんの家のドアを閉めると、足元に黒い影が見えました。
「忘れてたわけじゃないわ、子供にも、色々と事情があるのよ」
「ナー」
「分かったわよ、うちの牛乳をあげるわ。お母さんには内緒よ」
彼女は私の心配をして、来てくれたのかもしれません。彼女は悪女だけど、悪女ってのは大抵いい女なのだと、前に見たアメリカの映画で言っていました。悪いのにいい、それの意味がよくわかりませんでしたが、きっとそれは尻尾の短い彼女のような子のことを言っているのでしょう。
小さい私達はクリーム色の建物を離れ、いつか私達が出会った堤防へと歩きました。
人生には幸せがいっぱいに話まっている。
私はその言葉を何度も心の中で唱え続けました。
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