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Show Notes
第6
もうなく本格的な夏が来る。そんな中、気温はどんどんと高くなって、私はアバスレさんと一緒に扇風機の風を浴びながら、アイスを食べていました。
「不思議よね、扇風機の冷たい風を当てると、いつもより早くアイスが浴びける」
「風が吹くとね、アイスにあったかい空気がどんどん送られるんだ」
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「こんなに涼しい風なのに?」
「お嬢ちゃんにとってはね。でも、アイスよりはあったかいだろう?」
私はまぶたからめの玉が落ちてしまうんじゃん愛かと思くり感心しました。やっぱり、アブズレさんは私よりずっとずっとかしこいです。
だけど、そんなアブズレさんでも、南さんがいなくなった秘密については、何もわからないようでした。だから南さんのことは、本当に不思議なことなのだと思いました。
「人生とは、スイカみたいなものよね」
「どういう意味だい」
「ほとんどの部分は噛んで飲み込めるのに、食べてると口の中にちょっとだけ飲み込めない部分が残るの」
「あはは、そうだね。だけど飲み込めなくてもどこかに埋めたら芽が出てくるかもしれない」
「素敵」
「ねえ、お嬢ちゃん、お服はいっぱい?」
「全然、夏になったら食欲がなくなるってひとみ先生が言ってたけれど、それも不思議の一つだわ。私、暑い方がエネルギーを使うからたくさん食べなきゃって思うの」
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「じゃあお嬢ちゃんに使いを頼む。スーパーでスイカの切った奴を買ってきてくれる?」
「行ってくるわ!」
私は振り切ってアブズレさんからお金を預かり、脱いでいた黄色い靴下を履きました。アバズレさんは、お仕事の化粧をするためにおうちで留守番です。アイスもだけれど、スイカも私の大好物。私は友達のアブズレさんが私と同じものを好きなことをとても嬉しく思いました。
「もしかすると、幽霊だったりして」
私が太陽の下に出る前に麦茶で体の中の水を増やしていると、アブズレさんが顔にクリームをつけながら言いました。
「なんの話?」
「南さんのことさ」
幽霊、それは考えてもみなかった南さんの正体でした。私は南さんの顔を思い出してみます。
「だけど、南さんは透けていなかったわ。足もあったし。どうちらかというと、幽霊というよりは、トトロの方がぴったりかも」
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「あはは、そうか。じゃあ。お嬢ちゃんが子どもの間にきっとまた会えるね」
誰かにそうかもしれないと、思いました。私は、南さんとまた会える日のことを本当に楽しみにしています。
「行ってきまーす!」
靴を履いて、ポケットにお金を入れて、外の日陰でごろごろしていた小さな友達と一緒に近くのスーパーに行くことにしました。
外はとても暑くて、太陽さんだけじゃなく地面も壁も熱い空気を出しているのだから、私は麦茶の飲んできていおいてよカッタと思いました。あの麦茶がなかったら、スーパーに着くまでにちゅちゃいミイラになってしまっていたでしょう。
夏に似合わない黒い毛皮を着た彼女は、日陰を深してそこを歩いていました。彼女は4本の足に、靴も何も履いていないのだから当然だと思います。仕方なく、日陰が当然ないところでは私が彼女を持ちあげて運んであげました。連ばれている途中、彼女はずっと「ナーナー」と歌っていました。私も、それに合わせて歌います。
「しっあわせはー、あーるいーてこーない」
「ナーナー」
大きなスーパーの前に着くと、たくさんの人達が自動ドアから出たり入ったりしていて、私はまるで、スーパーがスイカを食べて種を吐いているみたいだと思いました。自動ドアの前に立つと、中からの冷たい風がスーパーの吐息みたいで、私はその心地よさにしばらくじっと立ち止まってしまい、少し人の邪魔になってしまいました。
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「じゃあ、ここで持っててね」
「ナー」
彼女を座らせておくのにちょうどいい日陰には先的がいました。彼女よりも何度も体の大きな金色の犬が、首輪をつけられて座っていたのです。彼女は、彼を怖がることもなく隣にちょこんと座りました。彼女の存在に気がついた彼女を見て、彼女も彼も見て二人はしばらく見つめ合いました。あら、もしかして窓が始まったのかしら。
悪女である彼女が真面目そうな彼を幸せにできるのか心配になりながら、私は二人の間を邪魔してはいけないと静かにスーパーの中に入ることにしました。
スーパーに入るにあたって、まず私はいつものように警備員さんに挨拶をします。物語の門番見たいに扉の傍で構える警備員さんは、私の挨拶に敬礼で返してくれました。前は彼らのことを出張に来ている警察官なのだと思っていましたが、そうではなくのスーパーを専門で守る正義の味方だということを以前に魔法使いのように歳をとった警備員さんに教えてもらいました。
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スーパーの中に入ると、私の小さな鼻にたくさんの匂いが同時に届きます。
私は大きなスーパーがとても好きです。何度来ても、ここには見たことのないものや、食べたことのないものがたくさんあって、その中は私の大好きなもの埋まっています。図書室で素敵な本を探すのと、とても似た嬉しさを私は感じます。
スイカは、すぐに見つかりました。丸い切っていないものと、三角の切ってあるものがあって、私はアバズレさんと二人分、切ってあるものをスーパーのかごの中に入れました。スイカが並べてある棚には、他に四角いスイカが売っていて、私は生まれて初めて見たそれにびっくりしました。それは買うのに必要なお金も丸いスイカに比べずっと多くて、やっぱりスイカも皆と違う方が価値があるのね、と納得しました。
お目当てのスイカは見つかったけれど、私はスーパーの中を見て回ることにしました。友達の恋路の邪魔をしたくなかったのと、まだもう少し涼しい場所にいたカッタからです。
魚を見て、野菜を見て、いつかはおばあちゃんのようになりたいと思ってお菓子の材料コーナーに置いてあったレシピのカードを順番に見ていると、突然、後ろから声をかけられました。
「小柳さん」
私はその知的な声に振り向きます。その時の私の顔は、今日の太陽のようになっていたことでしょう。
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「あら、荻原くん。お買いもの」
「私はスイカを書いた来たの、暑いもの」
「うん、誰かにあついね。星の王子さま見たいに、どこか涼しい星に行きたいな」
私は、さすがは荻原くんだと思いました。クラスで「星の王子さま」と読んでいるのなんて、私と荻原くんは以外にはいないでしょう。私は荻原くんと話すのは、少し前に私がバオバプの木について教えてあげて以来でした。学校では、荻原くんは大体いつも誰かと喋っているので、この機会に荻原くんの喋れるというのは私にとってとても嬉しいことでした。
もう「しろい象の伝説」を読み終わっていた荻原くんと、私は物語についてしばらく話をしました。5分?十分?私はついアバズレさんの使いで来ていることを忘れてしまっていました。
手元のスイカを見て本当の目的を思い出した私は、もの凄く名残惜しかったのですが、大好きなアブズレさんを待たせるわけにはいかないので、荻原くんとお別れすることにしました。
私は荻原くんは友達ではありません。喋るのは時々だし、一緒にお弁当を食べたことも、一緒にお菓子を食べたこともない。それに荻原くんは私にだけ話かけるのではなく、クラスの誰にでもあんな感じなのです。もちろん桐生くんにも、だけれど、私は、なぜだか荻原くんと話しすることが、アバズレさんや南さんとお話をするくらい楽しみなのです。きっと荻原くんだけがクラスで私と同じくらい賢いからだと思います。
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ぬるくなってしまったスイカを別のスイカと取り替えて、私はやっとレジに並びました。少し並んでからレジのお姉さんにスイカを渡し、お金を払うと、「お使い違いね」と言われました。別に全然違くなかったので「ありがとう、だけどそうでもないわ」と返してました。
白いレジ袋を貰ってそれにスイカを詰め、さあてアバズレさんのおうちに帰ろう。
そう思った時でした。
私は飛び上がりました。
突然聞こえた、大きな声にびっくりしてしまったのです。
信じられません。
まるで、前に読んだミステリー小説の中のような出来事が起こったのです。
それはスーパーの出入り口の方でした。激しく大きな声が聞こえました。びっくりしてそちらに目をやると、警備員さん二人が、誰かを押さえ付けているのが見えました。その近くには、自分の顔を、まるで傷口を隠すみたいに押さえる他の警備員さん。大きな声は、床の三人が出していました。
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「動くな!」
「警備員さんの一人がそう呼ぶと、顔を地面に押し付けられた誰かが意味のわからない呼び声をすpーパーの中に響かせました。私は、何かはわからないけど、誰かを傷つけようとしているようなその声に、その場から動くことが出来なくなりました。
何が起こっているの?全くわかrなくて、でもとても不安で、精一杯、私のちっちゃい頭で考えていると、私と一緒で立ち尽くしていた大人達が、「万引きかしら」と話していました。万引き、それが何かを私は知っています。泥棒です。
あの人、泥棒をしたのが見つかったから捕まえられているのか。私は納得しました。
納得はしたけれど、やっぱりしばらく動くことが出来ませんでした。
私が動けるようになったのは、入り口の所でパシャパシャと携帯電話で写真を撮っていた人達が警備員さん達に注意を受けている頃でした。私はまだ携帯電話は持っていません。持っていたとしても、悪い人の写真なんて欲しくありません。顔は見えなかったけど、きっと怖い顔をしているに違いありません。スーパーの出入り口から、泥棒をした人どこかに連れて行かれ、スーパーの中は、まだザワザワとしていました。
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人がで入り口から段々アリみたいに散っていて、私はその隙を見て外に出ることにしました。1秒でも早く、この怖いことがあった場所から脱げ出したかったのです。出る時、ちらりとみると、さっき戦にが起こっていたあたりに赤い点々が落ちていました。私はすぐに目を逸らして外に呼び出し、暑い空気の中で思いっきり深呼吸をしました。私は心に隙間を作るのに死でした。暑い空気は、心まで冷えていた私の休にちょうどよく住みこんでくれました。
「ナー」
下を見ると、小さな友達が一人で恨めしそうにこっちを見ていました。彼女といい関係になったはずの金色の犬は、もういません。
「何よその目は。忘れてたわけじゃないわ。色々と大変だったのよ。さ、アバズレさんの所に戻りましょう」
不満気な彼女を連れ、わたhしは出来る限りさっきの出来事を思い出さないようにしました。歌ったり、意味もなく彼女を運んだり、彼女にあの犬について訊いてみたりしました。だけど、私の心はずっともやもやとしたままでした。この気持ちは、ずっと前に家でお父さんとお母さんが大声で喧嘩をしていた時に感じたものと似ていました。
私は、間違った事をする人を注意する勇気と正しい心を持っています。
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あの誰かあが私の目の前で泥棒をしたのなら、きっと私は注意をしたでしょう。なのに、間違った事をした人が捕まえられるのを見ただけなのに、今こんなにももやもやとしているのはなぜ、なのか。私にはわかりませんでした。大変なものを見てしまった。
そんな気持ちがあるのです。
アバズレさんの家に着いてからもそのもやもやは続き、アバズレさんがスイカを冷やしてくれている間、私はそのもやもやについて訊くべきだったのかもしれません。だけど、私はあの時のお話をしたくありませんでした。言葉にして、あの光景や音を心の水面に浮かび上がらせたくありませんでした。だから、楽しかった話だけをすることにしました。
「スーパーでクラスの子に会ったの。ちょっとお話ししたわ」
「あ、お嬢ちゃんクラスで友達出来たんだ。よかったね。友達がいないって聞いて心配してた」
「友達じゃないわ。大切なお話もしないし、持ち合わせをして選んだりもしないもの。それに友達ならアブズレさんや、あの子や、南さん、おばあちゃんもいるわ」
「クラスの子達のことも友達って呼べばいいのに。私や、南さんや、おばあちゃんと呼ぶみたいに。そうしないのは、なんで?」
「そんなの簡単。心と心の距離時るからよ」
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アバズレさんは何かを言いかけた見たいに口を開きましたが、結局「そっか」と言って薄く笑っただけでした。でも、その後私が続けた言葉でしょうてか、アバズレさんの顔はもっと深い深い笑顔になりました。
「その男の子はね、友達じゃないんだけれど、お話しするととても楽しいの。かしこくて、本のこともよく知ってるのよ。もっとお話ししたいなって思うけど、その子は誰にでも、優しいから。クラスの何も考えていない子達じゃなくて、もっと私とお話をすればいいのにと思うわ。
「おお?」
アバズレさんはベンでまぶたにお絵描きするのをやめて私を見ました。アバズレさんの笑顔は、いつものにっこりというものとは違いました。にやにや。こういう笑顔をする時、大人は大抵よからぬことを考えているものなのです。
「お嬢ちゃんはその子のことが好きなわけだ」
「ええ、まあ、珍しく好きなクラスメイトね」
もう一人、勇気さを持ってくれれば好きになれそうなクラスメイトがいるけれど、今の所その様子はなさそうです。
授業参観以来、彼は私から逃げています。
「そうじゃないよ」
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「そうじゃない?」
「お嬢さんは、その子に変をしているんじゃないの?」
言われて、私は自分の顔が破裂してしまうような気がしましたが、きっと気のせいでした。
「それは違うわよ。だって私、彼のこと何も知らないもの」
「そういうことだってあるよ」
「変って、結婚とかししたいって思うことでしょ。そんなこと、まるで、思わないわ」
「結婚だけが、変じゃないさ」
「じゃあ、変って何?」
「さあ、分からない。お嬢ちゃんの賢い頭ならわかるかもしれないけどね」
私は、アバズレさんに分からないことが私にわかるとは思えませんでした。結婚、変、私だってそういうことがあるのは知っています。でも、物語の中に出てくる変人達のように私は荻原くんとけおちをしたいわけではないし、見つめあいたいわけでもありません。ただ、お話がしたいだけなのです。
アバズレさんが冷蔵庫で冷やしくれたイカを一緒にあ食べながら、私はアバズレさんに訊いてみることにしました。
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「アバズレさんは、結婚したい人はいるの?」
「いない、私は、あんまり結婚しようと思ってないからさ」
「どうして」?」
アバズレさんは、天井を見上げて、「んー」と考えてから、答えました。
「プリン、みたいなものなんだ。子供の時の変は、甘い部分だけ見てればそれでいいし、それって凄く素敵なことだ。皆、それはわかってるんだ。だけど、大人になると、プリンには苦い部分があることも分かって、いつの間にか、よけて食べることが悪いことのように思えて、一緒に食べるようになる。だけど、私はコーヒーやお酒と違って、変の苦い部分が嫌いなんだ。それに、頑張ってそこをよける作業も面倒だから、段々食べなくなってきちゃった」
「難しいのね」
算数や理科よりずっとそう思いました。
「ま、今は結婚しない人なんてたくさんいるしね」
「私も、大人になっても結婚なんてしないきがするわ。人生とは、ベッドみたいなものよね」
「どういう意味?」
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「寝るだけなら、シングルで十分」
アバズレさんは1秒、私の目を見てから、これまでで一番大きな声で笑いました。私は、自分のジョックを喜んで貰えて、とても嬉しい気分でスイカをかじりました。
「意味分かって言ってんの?」
そのアバズレさんの質問の意味こそが分からず、私は首を傾げました。
その日の夜、私は色々なことを考えながらちゃぱり十時には眠たくなって、ふかふかの、ベッドの中で眠りにつきました。
次の日、学校に行くと、信じられない噂が流れていました。
桐生くんのお父さんが、泥棒をして警察に捕まって、というのです。
あんな優しそうなお父さんがそんなことをするはずかないわ、そう思い、桐生くんに噂が嘘であることを宣言させよう、その思っていたのですが、無理でした。
この日、桐生くんは学校に来なくて、ひとみ先生に聞いても、何も考えてもらうことは出来なかったのです。
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